ノルウェイの森/村上 春樹/★★★★★



15年ほど前に一度読んだきりで、内容をビタイチ覚えていないんです。が、今度映画化されるっていうんで、再読することにしました。映画の監督はトラン・アン・ユン。『青いパパイヤの香り』や『夏至』の人です。私は彼の作品が大好きで、村上氏も彼ならば、と映画化を了承したというのだから観ないわけにはいかない。そのための予習というか復習という意味合いでの再読。

結論から言うと、ノルウェイの森、素晴らしいです。そんな簡単な言葉で表すのがふさわしくないくらい。

少なくとも私が30余年生きてきて、一番心を大きく揺さぶられた作品であることは確か。今、この歳で読んだということが重要なんだろうな。内容を一ミリも覚えていなかったことからもわかるけど、10代の私は"村上春樹を読んでいる自分"に酔っていただけであり、人生経験も乏しく、つまりは非常に若かった。おそらく、読み終えても「ふーん」ぐらいにしか感じなかったのだと思う。けれども時を経てこの歳になって、まったく違った感じ方ができた。

死とは生の対極ではなく、生に付随したものであることや、人を心から愛するということなど、自分が経験したからこそ実感できることが多かった。あと、随所に出てくるメンヘラーたちのエピソードね。これも、そういう人にかかわったことがあるかないかで感じ方が全然違ってくるし。

あと、描写が映像でスッと入ってくるのが不思議だった。こんなに昔の物語なのに。さすがトラン・アン・ユンが目をつけただけあるなと思った。ただし映画はキャストが日本人なので、配役によっては地雷の可能性も否めないのだが…。話は逸れるけど、日本の作品に感銘を受ける外国人って何だか不思議。私が外国の作品まったくダメなので。


読後、気持ちが高ぶって眠れず、訳もなく涙があふれて、しばらく離れて暮らしている夫に電話をかけて長い話をした。今この作品を読み返してよかったと思う。やっぱり村上春樹はすごいわー。夫が春樹ストなので、彼の薦めで最初の著作から順に読むことにした。