南の島のティオ/池澤 夏樹/★★★★★


なんとなく手に取ったら、これが大正解だった。私はこの手の児童文学が大好きだし、改めて池澤夏樹好きだーって思った。実は『君が住む星』がキザすぎて、なんか違うーと思っていた矢先だったので。初めて『マリコ/マリキータ』を読んだときのあの感覚に近いものを、今回感じられたので安心した。夫は『マリコ〜』と『ティオ』は毛色が違う、と言っていたけれど、私の中では同じ色分けなのでまったく問題ないです。

南の島に住むティオが語る、10篇の物語。精霊と自然に包まれた美しい島。文明もそれなりに発達しているからこそわかる、大自然とのかかわり。不思議な出来事や事件。透明感のあるちょいファンタジーで、少しだけ毒がある、ってのが好みなのかも。

私は、いや、読んだ人はみんなそうだと思うけれども、カマイ婆が好きだ。そして、常に自分に正直で、等身大であり続けるティオも好きだ。いわば、ブレない人。

できればわが子にはこういう作品を読んでほしい。ここから自由に何かを受け取って育ってほしい。そう思えるような、そして自分自身の心が洗われるような作品だった。

いい時期にいい本を読んだ。