対話篇/金城 一紀/★★★★☆

初の金城一紀。『GO』は夫からの課題図書に入っていたのだけど、映画で観たからと後回しにしていて結局読んでない。なんかもっとお堅いというか、読みにくそうなイメージの作家だったので食わず嫌いしていたんだけど、全然そんなことなかった。へえ、こういうの書く人なんだー、というか。これならちゃんと『GO』も読んでみようかな、と思った。


3篇の短編集。中でも一番印象に残ったのは3本目の物語。ある30代の男が身体をこわして仕事を辞める。この先の生活を思い途方に暮れていたところに舞い込んできた変わったアルバイト。とある老人と鹿児島までドライブに出かけるというのである。その車中での会話。

まあちょっとラストシーンが読めてしまった部分もあったけれど、それでもグッとくる。忘れてしまった“愛していた人”を、少しずつ思い出していくという行為が、一番の償いであるというように老人は語り続ける。そして男はそれを聞くことができた。ああ、なんだかこういう人生の締めくくり方もあるんだなあ、と感慨深くなった。