容疑者Xの献身/東野 圭吾/★★★★★

探偵ガリレオシリーズ完結編? なのかな? いやあ、とにかくそれにふさわしい素晴らしい出来だと思う。最高に面白かった! 文庫が待てなくて、図書館でハードカバーを借りて読んだのだけど、読んでよかった! なんというか、読み終えてからしばらくしてじんわり来るのね。すごいわ東野。


隣人母娘の殺人を隠蔽する、天才数学教師石神。それは靖子への想いゆえ。彼の書いた筋書きはよく出来ていて、警察の捜査とのせめぎ合いが面白いなあなんて思いつつ読み進んだのだけど、私、甘かったです。さすが東野、読者の何枚も上手でした。そんな低レベルで話してませんでした。なんつうの? ステージが違う?

そんなトリック、言われるまで気づかなかったよ! 伏線バッチリ張られてたのに、気づかなかったよ!

<ネタバレ>工藤尾行についてのミスリードホームレスアレには目を見張った。でもさすがに湯川と弁当屋に行ったときのあれはバレるっしょ。モロバレっしょ。挙動不審すぎるー。

やっぱりどんなに石神が論理的に完璧だったとしても、人の心はそうはいかないのが現実。石神の達観した想いを受け入れるには、靖子は人間的すぎた。自分たちだけのうのうと生きていくことはできないよ。もちろん湯川が真実を告げなければ、靖子はなすがままだったと思う。知らない方が幸せだったことは確かだ。でも湯川は、それはフェアじゃない、湯川の“好敵手”石神のためだ、と靖子に真実を告げた。
私としては、たとえ石神の自己満足であったとしても、彼の気持ちを尊重してあげたかったけどなー。塀の中でも数学さえあれば生きていける石神なのだから。湯川は自分でそれをぶち壊しておいて、「せめて泣かせてやってくれ…」ってのは酷な話じゃないの? ひどすぎるわー。石神の人生台無しじゃん。
まあ、犯罪者が勝利して終わってしまうのではまずいのかもしれないし、確かに靖子たちも裁かれるべきなんだけどね。でも、でも。あー、深いわー。
</ネタバレ>


ところで石神の顔はザブングルの加藤(悔しいです!の人)のイメージでした。体型とか全然違うけど。映画化のキャストとかまったく情報を仕入れてないのだけど、機会があれば観ようと思ってます。