きみが住む星/池澤 夏樹、エルンスト・ハース/★★★☆☆

世界中を旅して回る男が、恋人に向けて送る絵葉書と文章。それはどこから送られているのかはさっぱりわからないけれど、絵葉書の写真のとおりに切り取られた物語が語られている。写真1枚につきひとつの物語。
もしかしたらそれらのエピソードは全部嘘で、たまたま見つけた素敵な写真から適当に物語を紡ぎ出しただけかもしれないし、実際著者はそうしたのかもしれないけれど、そんなことはどうでもよくて、場所だってどこだってよくて、ひとつひとつの物語が素敵ならばそれでいいと思った。受け取る女性もそんなことどうだっていいって思ってるんじゃないだろうか。

なんというか、男性が旅先から恋人に絵葉書を送るだなんてちょっとキザすぎるし、後半はどんどんファンタジーに寄っていくので戸惑いもあったけれど、トータルで考えるとこんな風に旅先から絵葉書をもらったら楽しいだろうなあと思った。できれば恋人からよりも、同性の友人からもらった方がいいけれど。

中でも特に、白鳥に物語を話して聞かせるおじいさんのエピソードが好きだ。

メールや電話ではなくて、直筆の絵葉書や手紙を送ったりもらったりというあのアナログ感を、そういえばもう何年も体験していないと気づく。小学生の頃はペンパルとかいたんですけどね。何だったんでしょうね、あれは。不思議な時代でした。

それにしても、人から旅の話を聞くと旅に出たくなりますね。いろんな国に行ってみたい。