なんくるない/よしもと ばなな/★★★★★

なんくるない
よしもと ばなな
新潮社 (2007/05)

青春時代によしもとばなな*1にはまるだけはまって、20歳を過ぎた頃「私はもうばななを読む歳じゃない」と自分から勝手に離れてから久しい。が、少し前にたまたま手にとってみたら、またしてもばなな節にはまってしまった。たぶん私に10数年の年月が流れたのと同じように、著者にも時が流れていたってことなんだと思う。ずっと違う道を歩いていたけれど、ある日パッと同じ道に合流したような気持ち。ちゃんと同じ方向に向かって進んでいた、というようなことに気付けて嬉しい。彼女の作品に流れているものが自分の中にすっと入ってくる「これこれ、この感じ。」という感覚はとても懐かしかった。

沖縄に旅する人たちにまつわる短編集。私は沖縄に行ったことがないのだけれど、そのせいで余計に沖縄に対する素敵イメージが膨らんでしまった。なんかもうものすごい素晴らしい場所みたいになってる。たぶん素晴らしい場所に変わりはないんだろうけど。今すぐ、もう来週末とかにでも出かけたい気分。そして国際通りからちょっと入ったあのイタリアンのお店に行きたいと本気で思っている。たぶん実在しないけど。

ちょうど登場人物たちが私と同世代だから、ことさら感情移入してしまうのかもしれない。そして同世代である私も、彼女たちのようにいま沖縄に行ったらとても素晴らしい気持ちになるんじゃないだろうかと思ってしまう。たぶんちょっと影響を受けすぎているので困っている。というかやっぱり沖縄という場所は発作的に行きたくなる場所なのかもしれない。この歳で行ったことがないなんて、とてももったいないような気がしている。ああやっぱり来週末あたり行きたいかも。


よしもとばななが好きだと人に言うのは、なんというか「ベタすぎてダサい」と思っていたのだけれども、やっぱりいいってことを再認識したので、もうベタでも何でも好きは好きなんでいいや、と思いました。そして空白を埋めるべく、未読作品をがつがつと読みたい。




*1:当時は“吉本”表記