パーフェクト・プラン/柳原 慧/★★★★☆


上の帯でわかると思いますが、「身代金ゼロ! せしめる金は5億円」。こういう設定に弱いのです。誰一人傷つけることなく金だけゲット的な、しかもそれで悪者政治家がギャフンとか、そういうネズミ小僧ポリシーを持った愛される悪党が、案外好きみたいなのです私。さすが時代劇を見て育っただけあるぜ。まあこの物語がそうとは限らないのですが。帯の文字列だけで脊髄反射しちゃったもんで。

面白かったです。代理母で金を稼ぐ女、醜い小男、ヒモ、中国人親子、オンライントレーディング、虐待される子供とする母親、自閉症、クラッカー、コンピュータウィルス、ひきこもり…。とにかくありとあらゆる要素が詰め込まれている。オンライントレーディングなんてまったく興味を持ったことがなかったけれど、大枠だけ見ると興味深い。けれどもやっぱりハイリスクハイリターンのギャンブルという印象はどうしてもあって*1、自分には無理だわーと思った。私には一生縁のないものでいいわ。

で、物語は前半と後半で大幅に印象が変わってくるのだけど、私は前半だけで終わっても良かったな。そこでうまくまとめて終わってくれたら、個人的評価は★5個だった。大風呂敷広げてはみたもののどう収拾つけんのかと思ってたら、ソッチ行くのかよー!という若干の落胆は否めなかった。あと、解説読んで初めて著者が女性だって知って驚いた。何となく男性が書いているイメージだった。文庫化する際にだいぶ手を入れたっぽいですが、改善された方を読めてよかった。コンピューター関係はまったくの無知でこの題材に取り組むと言う度胸がすげえ。
今後どんな作品を出してくれるのか楽しみなんですけれども、この著者、かなりのバイタリティがあるらしく、経営してる会社が忙しくて仕方ないっぽいですね。




*1:もちろん地道にやっていけるものもあるんだろうけど