青空の卵/坂木 司/★★★☆☆



坂木司とひきこもりの鳥井が、ちょっとした日常の謎を解きながら人と交流していくという、安楽椅子探偵っぽい(んだけど厳密には違う)ミステリ。
謎そのものも物語の進行もスムーズですいすい読み進められるのだけど、なんというか、これこれこういう人の人権を尊重しようよ!みんな!という説教臭さが鼻につく。取り上げている題材が「盲目の人にどこまで干渉するか」だったり、「同性愛者を人として受け入れる」だったり、「人を肩書きで呼ばずに名前で呼ぼう」だったり、「親に捨てられた子」だったり、「ストーカー心理」だったり、「夫にかまってほしい妻」だったり、確かに興味がないわけではない題材ばかりなのだけれど、坂木司があまりにも“正義感の強いバカ正直なお人よし”すぎるのと、道徳的なメッセージを前面に押し出してくるところに「あーハイハイ」って鼻白んでしまう。
あと坂木司と鳥井との関係性が、非常にBLっぽくもあるんだがこれはこれで胡散臭く、また鳥井が取り乱すシーンで幼児化してしまうこと、それを坂木司が母親のように抱きしめ共に涙を流しなだめるというあたりがどうしても受け入れがたい。なんと言えばいいのか。うそ臭い、ってことなんだろうか。読み進むに従い、坂木司のことがどんどん嫌いになってくるしイラついてくる。
それさえなければなあ、と思いながらもおそらく続編を読んでしまう自分が想像できるのだけれども。なんとなく不本意
あ、でも逆に鳥井の好感度は上がってくるので、彼のツンデレっぷりや料理のおいしそうな描写はこなれてきていい具合になる。中でもカナダの地元の人しか口にすることの出来ないと言われているメイプルシロップがかかったパンケーキは、非常に食べたい。