鉄鼠の檻/京極 夏彦/★★★★☆


山寺の和尚さんたちが、てんやわんやで大騒ぎ。まあ簡単に言うとそんな話なのだけど、うーん、やっぱ京極夏彦すげーわ。宗教研究家に「禅とは何ぞや、ということを的確に表現した小説であり、中でも京極堂の説明は秀逸」と言わしめた「鉄鼠の檻」。こんなにも曖昧な“禅”なんてものを取り上げて、よくもまあこんだけわかりやすくしたよなあ、と思う。小難しくて分厚い文献を繰るよりも、これ読んだほうがはるかに禅のことわかるよ、しかもエンターテイメント付き。まあ、「わかる」という表現も微妙なんだけれども、少なくとも「わかったような気に」はなれる。禅に宗派みたいなものがあって、“悟る”ということのとらえ方や修行の仕方がまったく違うことなんて、知ろうともしなかったもんなあ。勉強になります。以下、ネタバレあり。


殺人事件の犯人はある程度目星がついていて、しかも仁秀は完璧に裏あるぜーって思ってたのが当たったのでちょっと嬉しい。ただ、殺人の動機が自分よりも先に悟った人への嫉妬だったというのがイマイチ納得しきれない。
それと仁如と妹の鈴子が近親相姦だとか、英生と托雄が同性愛者だとか、その辺もある程度察しはついていた。もう、このシリーズ読んでるとその程度のことじゃ驚かなくなりつつあるんだけど、菅野出家してたこととか、公衆の面前で鈴をやっちゃったこととか、鈴が実は鈴子の娘ではなくて本人だったとか、その辺りはさすがに衝撃だった。あと、菅野(博行)が大麻やってた理由って、もう自分はだめだーってなって、堕ちるとこまで堕ちてしまったということ? まあこういう最悪にダメな人というのは実際にいるもんなー。こういうとこがリアルだよなあ。
あと今回は木場修が出てこないのでちょっと寂しかった。久遠寺のじいさんが頑張ってたのは面白かったけど。京極堂の憑物落としも、それぞれポイントが違ってて、ああ今回はこう来たんかー、って思う。それはそれで楽しみ


さて、1341ページにも及ぶ「鉄鼠の檻」を読み終えて、お次は「絡新婦の理」なのですが、これが今自宅にある最多ページ本だと思います。1374ページ。言うてもまあ鉄鼠より30ページ多くなっただけなので、もうどうとでもなれという気分です。もう麻痺した。難点は重いというだけ。1ヶ月以内で読み切りたいものです。