月魚/三浦 しをん/★★★☆☆

ある友人が絶賛していたので、たまたま自宅の書庫にあった(恋人が購入したもの)のを引っ張り出して読んでみる。古本屋が舞台なので、つい先日読んでた京極堂とかぶってしまい、頭が切り替わるまで気持ち悪かった。

ところが読み始めたらしょっぱなからものすごいBL臭。え?この真志喜は、男の子みたいだけど実は女とかいうオチ?って読み進めたら普通に男の子で。うはー、ソッチ系か! 薦めてくれた友人は特にBLの人*1ではないので、驚くやら困るやら。本の持ち主は感じてない様子だけど。繰り返し出てくる中庭で熟れたトマトを手渡すシーン、耳朶をほんのり紅く染めている真志喜、お酒で上気した真志喜のうなじ、必要以上に真志喜の髪の毛を触っている瀬名垣。そしてそれを観察する視点、これがまたエロいんだけども。とにかくこんだけ美少年が戯れてたら、もうBL視線でしか読み進めないっつのー!

「それにしてもお前は私の髪を触りすぎだ」(と言いながらされるがままになってる)
「お前の髪、気持ちいいんだよ猫みたいにやわらかくて」

…ッ!!!!! 瀬名垣、おまえは…本当に。もうねー、エピソードが官能的に描かれすぎて、というかそもそも真志喜と瀬名垣がスキンシップしすぎなんだけど、なんなの?ふたりとも探り合ってるだけで本当はわかってんだろ?じらし合ってんだろ?みたいなもどかしさがあって。敷いた二組のふとんを瀬名垣がわざとくっつけるシーンなんて、ふざけてるように見せてるけど半分以上本気だよなー。かわされたら笑ってごまかせばいいし、もし乗ってきたらそのときは…二人でタブーの壁乗り越えちゃおうぜ的なニュアンスがプンプン漂ってくる。ああじれったい、もういいから、さっさとやっちゃえよ!っていうね。<ネタバレ>ラストでは二人がきつく抱き合うところで終わるので、ああこれはたぶんやるよなと、いや、もう私の脳内では完璧にやっちゃってます。</ネタバレ>あと2つ目の話なんて完全に先生の真志喜を見る眼がアレすぎ。なんだろな、タブーを犯すか犯さないかの瀬戸際が描かれてるからこそ、読んでてドキドキするのかなあ。

まあでも全体のつくりとしては嫌いじゃない。そしてあらゆる場面がみずみずしく鮮やかで、映像化したときの極彩色な感じが想像できる。

というか別にBLは好きでも嫌いでもないんだけど。10代のとき、友人に半ば無理矢理薦められた「炎のミラージュ」というコバルト文庫のシリーズと、その友人が描く「やおい本」、コミケという名の大きなイベントで訳がわからぬままその「やおい本」とやらの売り子を手伝った経験、それによってもたらされたBL*2という世界の存在により、そう言われればと合点が行くことが多々あったとか、その程度の知識だし。

詳細については差し控えるけれども、どこからともなく三浦しをんがBL風味であるという噂を聞き、それ以前にあさのあつこもBLらしいと聞いていたので、「月魚」の解説をあさのあつこが書いてた時点でああもうそういう風にできてるんだなーと思いました。もう、あざとい。そんで実はワタクシあさのあつこ未体験なのですが、この解説を読んで彼女の言葉の使い方とか世界観の構築の仕方みたいなものを垣間見て、もしかすると素敵かも…?という予感がしております。BL関係ナシの作品を読んでみたい。なんだか最後の最後に三浦しをんそっちのけであさの節にやられちゃった気がするので、近いうちにあさの作品を読んでみようと思ってます。BLは…ないかな、やっぱり。

*1:この表現もどうかと思う

*2:当時はそんな名前はついていなかったが