魍魎の匣/京極 夏彦/★★★★☆

昔からただ「分厚いし小難しそう」という理由だけで食わず嫌いしてきた京極作品、8月に『姑獲鳥の夏』を読んで以来すっかりハマっております。もっと早く読んでおくんだったなあ! 噂に聞いていた京極堂のうんちくも読んでみたら全然うっとおしくないし、というかむしろ非常にわかりやすい言葉で書かれていると感じた。これを受け入れられるかどうかが京極作品の是非を分けるポイントだそうですが、私はOKでした。まあまだ2冊しか読んでないから、以降読み進めていくうちに「…もういいよ」って思うのかもしれないけど。

京極夏彦の作品はページ数が多いことで有名だけれども、1048ページの本を読み終えるのに1ヶ月はちょっとかかりすぎですね。標準的な文庫を300ページとして換算すると3冊ちょい。1ヶ月に読めない数じゃない。元々早いほうではないけれど、明らかに読むのがさらに遅くなってる。

さて、読了してみてやっぱり内容が濃くて大変満足なのですが、『姑獲鳥の夏』の★5つに比べて-1した理由は、関口があまりにもバカ扱いされすぎ(自分がバカと言われているようでむかついた(投影しすぎ))なのと、先が読めてるのにやたら引っ張るのがイラつくことでしょうか。あれ? もしかしてアンチ京極って「うんちく」じゃなくてこの「引っ張り」が問題なの?

<ネタバレ>
・加菜子を線路に突き飛ばした犯人はどう考えても頼子
青木刑事久保仕事部屋に踏み入り原稿を読んでいるシーンがやたら怖い
・美馬坂登場の瞬間、彼が陽子の父であり、加菜子は近親相姦で生まれた子だってことは予想できてしまうから、最後の最後まで引っ張ってもそれほどの衝撃はない。で、近親相姦=悲劇的結末(美馬坂の死)だろうな、最悪心中か、というのも読めてしまい、ラスト予定調和な感が
・匣に入った久保が見たい。というか加菜子の匣が見たい
・結局関口の魍魎とは何だったのか?(読解力不足
・一体誰が狂っていて誰が正常なのかなんてわからない
</ネタバレ>
とはいえ、必要以上の引っ張り以外はやっぱり面白い。ただ、あまりに長い時間をかけてこま切れで読んだがため、前半のエピソードが曖昧になってしまったのが残念。もっとまとまった時間で集中して読みたかった。まあ、長い間ずっと楽しみ続けられたので良かったことにします(ある意味では長いこと人の心の闇やらグロ描写と対峙せねばならなかったのだが)。『姑獲鳥の夏』のトリックに比べれば、ずっとこちらの方がしっくりきた。

もうワタクシすっかり京極堂に惚れましたので、京極作品はコンプ目標で今後も読み進めて行く気満々でおります。間に数冊、標準サイズのを挟みつつですが。各キャラが主役持ち回りなのかしら*1? 何の根拠もなく勝手に期待してますが。楽しみ。

*1:関口→木場修ときて、→榎木津だといいなあ