ぼくのミステリな日常/若竹七海/★★★★☆


10年ほど前に『五十円玉二十枚の謎』という企画モノ(ミステリ作家たちの競作)を読んで若竹七海のことを知ってはいたのだけれど、残念ながらこの作品全体としての出来が私の好みでなかったため(企画は非常に面白いのに)、そのときのマイナスイメージが尾を引いて、自発的に彼女の作品を読もうと思えなかった。課題図書リストに入っていなかったらきっといつまでも読むことはなかったろうと思う。けれども今回、この作品は私の中の彼女に対する負のイメージを塗り替えてくれた。ナイスきっかけである。
以前上記の作品を読んだ際に、若竹氏について「作中に自分を登場させる」「構成が変わっている」という印象を受けたのだけれど、そのカラーはやはり健在だ。「ぼくの〜」の中での若竹氏(=主人公)は、社内報の編集長を任された女性会社員であり、これらはその社内報に連載されたミステリ仕立ての短編小説、ということになっている。月間なので、各月ごとに季節感のある内容(8月は怪談とか)になっていて面白い。
話はそれるけど、私は昔から『学級新聞』とかその類のローカルペーパーを自作するのが好きで、小学生のとき勝手に学級新聞係に立候補して、しこしこ手書きしたクラス内ニュースを教室の掲示板に貼り付けたりしていた。架空のテレビ欄とか作ってた気もする。今見たら瞬時に燃やしたくなるだろうけど。大人になってからもその癖は抜けず、大学のサークル内で勝手に月報を発行して配って悦に入っていた。なのでこのテの企画に弱いのである。
さて話を戻すけれども、内容については、作家の卵が書いたものだ、というエクスキューズがしてあるため多少気になる点や整合性に欠いた部分、わかりづらい表現があっても何となく「まあ仕方ないか」とスルーしてしまうので、ちょっとずるいような気もする。エンディングもなんか拍子抜けだし。まあ内容はもとより、アイディア勝ちなんだろうな。事実私はこの構成の面白さに持っていかれてるわけだし。

なんにせよ、今後も機会があれば若竹氏の作品を読んでみたいと思えるようになったので、良かったと思っている。