六枚のとんかつ /蘇部健一/★☆☆☆☆

例えば飲みの席などでこの作品の話題になったとき、私の周囲の本読みの方たちは苦笑しつつ「ろ、ろくとん! プププ! あれなあ!」といったような反応をする方が多いように見受けられまして。ミステリのミの字もわからぬ上に1年間に100冊読了することさえままならぬ読書量の私は当然未読であり、みなさんの反応がどういった意味なのかサッパリわからないので、蚊帳の外感を拭えぬままキョトンとした顔でその場をやり過ごすしかなく非常に困っていたのですが、id:amaikoiさんのオススメリストに入っていたので読んでみました。
結果、ああなるほどね…という感想です。特に1話目のどうしようもないオヤジギャグ的センスをちりばめた展開を知ったときにはある意味思考がストップいたしまして、つい昨日まで社会的な問題を真面目に取り上げた少年たちの葛藤みたいなミステリを読んでいた私としましては足元をひょいっとすくわれた感じでズコーッてなりましたズコーッて。まあでも冒頭でそれを提示してもらったんで、あとは「そういうもの」と認識しながら読んだので特に大きな問題はなかったと思います。
ただ一つだけ言えるのは、私は「ユーモアミステリ」というジャンル、そして人の生き死にという事件をライトに語ってしまうスタイルやギャグみたいなものが好みではない(この作品に限らず)、とわかったということです。生真面目ですみません。なんかどうしても笑えないんだ。そういうの。
あと、島田荘司の『占星術殺人事件』のトリックにインスパイアされたという『六枚のとんかつ』ですが、こっちよりも同じトリックを使った『五枚のとんかつ』の設定の方が面白かったです。そんで、「『占星術殺人事件』のネタバレになるので未読の方は注意!」と明記されていたにもかかわらず、2秒で次のページを開いた私は「こらえ性」ってものがなく、同時に「本の後半にさしかかった時点で“この先読むべからず”なんてありえるかぼけ!(失礼)」と自分が未読なだけなのにそういう都合の悪いことを棚に上げてプリプリと憤っている私はとても浅はかだな、と改めて思いました。
そして次に飲みの席でこの作品の話になった際は、私もたぶん未読の方に苦笑を向けながら「ろ、ろくとん! プププ! あれなあ!」といったような反応をするんだろうなあとおぼろげに予測しています。