8の殺人/我孫子武丸/★★★★☆

同著者の作品は『殺戮に至る病』しか読んだことがなくて、しかもこれが最高に素晴らしかったので、期待に胸弾ませて読んだ。これが我孫子武丸のデビュー作(あとがきを読んで初めて知った)だとは…。

『8』の字をかたどった蜂須賀建設の自宅で起きた殺人事件を解いていく、速水三兄弟のユーモア・ミステリ。

ユーモア・ミステリって、ふざけている感がむかつくなあと思っていたはずなんだけど、最近すっごい勢いでハマっているゲームボーイアドバンスの『逆転裁判』のかもし出す雰囲気と似ていたので、慣れというか免疫がついてたというか、何というか。

速水警部補と木下刑事の漫画としか思えないドタバタや、いちおの人の死を何だと思ってるんだ感、慎二のそういえばアンタ誰と誰にも言わせない名探偵っぷりなど、いやもう非常に面白かったです。これはこういうものとして楽しむべきなんですね。さすが80年代という感じ。
慎二が海外の有名な推理小説について講釈をたれる辺りは、すげーな…としか言いようがない。これ、知ってる人が読めばさらに面白いんだろうなあ。それにしてもミステリマニアってすごい。我孫子先生すごいです。私が読んだことのあるミステリなんて、海外モノにいたっては皆無だし、小学生の頃図書館に置いてあった江戸川乱歩のシリーズくらい。ちょくちょく読んでいた割にはもうすっかり内容を忘れてしまいました。あ、そういえば中学生の時に赤川次郎を片っ端から読み、コバルト文庫山浦弘靖のトランプシリーズと藤本ひとみのマンガ家マリナシリーズを出版される端からすべて読んでいたというだいぶ恥ずかしい過去を今思い出しました(いや実際面白かったんですけど)。でも大人になってからもミステリを読み続けなかったという意味では私に「ミステリ脳」はなかったのかも。あるいは、ひとつのことを掘り下げる「マニア脳」が決定的にないような気もします。うん、たぶんこっちな気がする。何をやっても中途半端で放り投げる人の典型みたいなものです。

で、えーと、話がだいぶ逸れましたけど、すべての登場人物に話を聞き、その矛盾点を追求していくあの感じはやっぱり面白いです。たぶん個人的にコツコツ派が好きなんだと思います。というわけで、これ読んでまた『逆転裁判』の続きを始めました。やっぱすっげーおもしれー。よーし、2も3も買っちゃうぞー!なんて意気込んでますが、例によってクリアする前に放り出さないように頑張ります。