ななつのこ/加納朋子/★★★★★


ぷはー…。久々にすげーいい本を読んだ。読後感がたまらなくいいので、しばらく余韻に浸り続けていたい…。ぽわわん。


7話からなる短編集。読んでいてなんとなく、北村薫の円紫シリーズっぽいなあという印象を受けた。とはいってもそのシリーズは1作目しか読んでないのでテキトーなこと言ってます。

  • 主人公が大学生の女の子(ニュートラルな立ち位置でどちらかといえば冴えない感じの)
  • 話を聞いてくれる素敵な親友がいる
  • ちょっとだけ古くさい(ギャグとかが)
  • 通続低音的な基本ストーリーがあって、その上で起きる身近な謎を探偵的役割の誰かが颯爽と解き明かす

あたりの要素がたまたま合致しただけで。というかこのスタイルってよくあるタイプなのかしら。

この一作品を読んだ限りでいうと、私は加納氏の語り口もさることながら伏線の張り方と風呂敷のたたみ方がとても好きです。終わりよければすべてよし、というわけじゃないけど、やっぱりエンディングは大事ですよ!(若干の出来過ぎ感はあるとはいえ、ね。)


数々の謎は<あやめさん>然り佐伯綾乃氏が、知恵の輪を外すように明快に解いてくれるのでスカッとするし、豆知識的なものが散りばめられているので、実に楽しいです。紫陽花がどうやったら青くなるか、とかね。

とにかく1話1話、ちょいちょいジャブが繰り出されてジーンと来るのですが、特に表題作の『ななつのこ』でノックアウトされます。星の話がとても素敵で。まあ私が星ネタが好きなだけなのかもしれないけど。いしいしんじの『プラネタリウムのふたご」』のワンシーンを思い出したり、天文学の壮大さに思いを馳せてうっとりしたり、やっぱりNewton定期購読しようかなあ今からでも遅くないよなあと改めて思ったりして、ええと何の話でしたっけ。とにかく、瀬尾と駒子のやりとりがすごくモゾモゾして、でも自然に分かり合えてて、その先の二人を想像してニヤニヤしちゃいます。いいなあ、あの不器用でもどかしい感じ!

それからもう何といってもラストに明かされる<ネタバレ>佐伯綾乃の正体と、それまでの6話全部が伏線だったというドンデン返し、それから佐伯と駒子の手紙のやりとりが書籍化された本のタイトル『一万二千年後のヴェガへ』に打ち抜かれまして。ちょっと前になされていた二人の星にまつわる会話がぐおん!とフラッシュバックして泣きました。もう! なんてロマンチックなの…!(すいません今だけ乙女でいさせて)あと私は個人的に劇中劇的な要素を含んだ、入れ子構造の物語が好きっぽい</ネタバレ>です。

というわけで、加納朋子の他の作品もぜひ読もうと思いました。


余談ですが、今ちょうど北村氏の円紫シリーズの2冊目を読み始めたのですけれどもやっぱりイメージがかぶって、モードが切り替わりません。混ざるー。