もう家には帰らない/編:クリエイトメディア/★★★☆☆

もう家には帰らないISBN:4043527020
『日本一醜い親への手紙』の続編。機能不全家族環境で育ったアダルトチルドレンたちが、はけ口を求めて親たちへ向けて書いた手紙。これは本物のドキュメントで、書いているのはもちろん素人だが、幼少期に身体的・精神的虐待を受けて育った人たちである。
WEB投稿が発端のためか、大多数が20代後半から30代前半で、まれに10代や40〜50代、最年長は60代。合計114編の手紙が綴られている。素人が書くからこそ、つたないからこそ、リアリティがそのまま直球で伝わってくる。
内容は、とにかくひどい。大抵が親への恨みつらみと、「こんなことをされた」という事実を淡々と述べている。ほとんどの人が、両親に対して「いつかお前を殺す」とか、「早く死んでほしいです」とか、呪詛を吐いている。親から愛を注いでもらえなかったどころか様々な欲望のはけ口となった子供たちは、成人したけれど社会に適応できないでいる。
幼児虐待のニュースをよく目にするが、虐待は今に始まったことではなくもっと昔からあった。ただ明るみに出ていなかっただけだ。閉鎖的な空間の中で行われていることは、何が正しくて何が間違っているかの判断力を鈍らせる。「こんなのおかしい」という気持ちは徐々に薄れ、感情や痛みを押し殺すことを覚え、誰にも言うことができないまま年月はすぎていく。これはドメスティック・ヴァイオレンス(妻や恋人への虐待)にも同じように当てはまる。子供(妻)たちは、親(夫)を呪っているのと同じ分だけ愛情を欲しており、同時に共依存に陥って彼らから離れることができないのだ。
あとがきによると、ここに記された多くの事実はまだ『ぬるい』方で、さらに衝撃的な投稿も大多数寄せられたけれどあまりにひどいので掲載を見合わせたそうである。凄惨な事実を載せると「私なんてまだマシな方」と、ひどい経験をしていながらも我慢してしまう人を増やすからだという。
ACの半数はすでに結婚し子供をもうけている。彼らは「自分と同じ思いをわが子にはさせまい」と思いながらも、愛情の注ぎ方がわからなかったり、感情が爆発して親と同じことを繰り返してしまうことがある。虐待の連鎖はそう簡単に断ち切れるものではない。
彼らが呪縛から解かれるために、一度心の中で親を殺してしまおうというのが今回の趣旨である。誰にも言えなかったことを誰かに聞いてもらうことで、彼らはわずかにでも癒されたのだろうか。この本を読んで、「つらいのは自分だけじゃなかった」と生きる力を得た人もいるかもしれない。
この続編は『子どもを愛せない親からの手紙』というタイトルで、かつて虐待をしていた親たちが自分のしてきたことを告白するドキュメントとなっている。『もう家に〜』は実は2作目で、1作目は内容がよりハードだったらしい。私にとっては2作目でも十分すぎるほどに救いがないと感じたけれど、3作目も読まないと心が着地しないので、たぶん読む。