空中ブランコ/奥田英朗/★★★★☆

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イン・ザ・プール』の続編。伊良部は相変わらずだが、1編ごとのまとまりとドラマ性は前作に比べて数段上がっているように思えた。前作で伊良部の(というか奥田氏の)手法が前知識としてあったから、疑問を感じることなくストーリーに入っていけたのかもしれないし、特殊な職業に就く患者たちに的を絞ったところがわかりやすかったのかもしれない。実際、私は各患者のエピソードを興味深く読んだし、エンターテイメントとして楽しめた。

この伊良部シリーズは、どのシーンにおいても、それらを映像として鮮明にイメージでき、かつ1枚の写真のように記憶にきちんと残るような描写がされている。そういう意味ではわかりやすくて万人に受けるだろうし、キャッチーと言わざるを得ない。
患者が伊良部病院神経科の入口をくぐり、伊良部がからんで一悶着あり、結果的になぜか病気は治っている。症例は違えどもこの起承転結パターンはほぼ似通っているから、毎回ハッピーエンドがくることを読者は知っている。そこにどんなドラマ性を組み込んでくるかが楽しむためのポイントであり、これは『ブラックジャック』や『ザ・シェフ』や『ドラえもん』などの短編シリーズモノに共通する部分があると思う。

おそらくネタがつきるまで奥田氏は伊良部シリーズを出してくるんじゃないかと予想しているので、次作も読もうと思う。そしてドラマ化予想もしておこう。