我輩は施主である/赤瀬川原平/★★★★☆

我輩は施主であるISBN:464397088X
久々に赤瀬川読んだけど、やっぱりこのジイさん大好き。
新解さんの謎』という本を初めて読んだとき、なんともいえない面白さがこみあげてきて、こういう気持ちになりたい時は赤瀬川だと決めた。巷で大ヒットになってしまった『老人力』はちょっと売れすぎたので逆に引いてしまって読んでないけど、そろそろ読んでみてもいいかなぁとちょっと思いはじめている。
語り口も好きだけど、なんつうか、その感性のポイントがいいんだな。ジイさんのずるさというか。時々出会うことがあるよね、そういうずるかわいいジイさん。
大学のとき、『芸術論』だか何だかの授業がとにかく面白かった。先生がまぁそういう類いのずるかわいいおじさんだったんだけど、宝島のVOW!みたいな看板をどっかから探してきては、スライドで映し出して『えーこれは…』とか真面目に講義してて、すごく面白かった。
「夏休みの課題で路上観察をして、同じような不思議看板を探してきたらいい成績をあげます」みたいなことを言っていた。結局私は遊ぶのが忙しくて路上観察できなかったんだけど。なんか面白いネタを提供して仲良くなっておきたかったなぁ。赤瀬川氏もその先生と通じるものがあって、『路上観察学会』という限りなく趣味に近い倶楽部を作っていて本も出している。同じ匂いのするジイさんだ。
この『我輩は施主である』は、実際に赤瀬川氏が家を建てたときのことをフィクションを取り混ぜながらノンフィクション風に書いているんだけど、さすがというか、赤瀬川氏のマルチ芸術家っぷりを存分に発揮した大プロジェクトになっている。そしてニラハウスができていく。
映画『みんなの家』もそうだけど、1軒の家が建つって壮大なドラマだ。それを赤瀬川氏が彼流にやるんだから、面白くないはずがない。
変わり者のずるかわいいジイさんの話を、お茶飲みながらくすくすと聞いてる感じの本でした。