楽しい終末/池澤 夏樹/★★☆☆☆

池澤夏樹なら外れはないかと思い、内容を確認せずに読み始めてしまったのだけど、小説じゃなくてエッセイ(というか論評)だった。小説しか知らなかったけど、この方、ものすごくお堅いことを書く人なんですね。

1990年に池澤氏がまとめた彼なりの終末論。なんと20年近く経った現在でも、世界はほとんど状況が変わっていない。多岐にわたって書いているようにも見えるけれど、それらは複雑に絡み合っているし、結局ひとつのことにたどり着く。地球が終末に向かっている中で、世界はどうあって、私たちは何を考え、どう生きるのか。

地球って、もっと果てしなく大きくて、何でも包み込んで浄化してくれるようなものだと信じて疑わなかった。自分たちのしたことが、地球をどうにかしてしまうだなんて思いもよらなかった。でも今はそうではないと知った。

だから、私は私ができることをやっている。今やっていることは続けたいし、これから先できることがあればやるだろう。破滅に向かっている人間や地球に、少しでもブレーキをかけられれば。それが少しでも地球のため(=我が子や、孫や、もっと後の世代のため)になるならば。私はこの問題にはそういうスタンスでしか関われないと思っている。みんながそう思えばいいに決まっているけれど、それは到底無理な話だろう。そして、それは仕方のないことだと思う。

どれだけ知識を深めても、あるいは何一つ知らなくても、最終的にはサハリンの老人のような心境に行き着くのかもしれない。同じ結論に達するのであれば、その過程をどうするかは自分次第。終末を待つ間に、家族と穏やかに暮らしたい。池澤氏がそう述べたときにはなんだか当たり前すぎて普通すぎて拍子抜けしたが、きっと私だってそうなんだろう。けれど、せめて、そのプロセスにおいて自分が前向きに働きかけたことによる自己満足を携えて、この世を去りたいとは思う。

いろいろ書いているうちに、なんだかどんどん胡散くさいというか嘘くさいというか、道徳の教科書めいてきて気持ちが悪いですね。こういうテーマは。