半落ち/横山 秀夫/★★★★☆

数年前に映画版を先に観てしまったため、原作を読む気がうせていたのだけど、たまたま夫が読んでいたので気が向いた。

現職の警察官が嘱託殺人で自首するが、犯人の梶警部は事件後の空白の2日間について黙秘を決め込んでいる。いわば“半落ち”の状態。その2日間に一体何があったのか…。

映画の記憶はかなり薄れており、読み進むうち何となく蘇る部分もあったけど、映画はだいぶ端折られていたはずで(実際とても物足りなかった)、そういう部分がきっちり補填された気がする。映画版の梶役の寺尾聡があまりにハマっていたので、頭の中では梶は常に寺尾聡だった。他のキャストは誰一人覚えていない。

映画と比べると、断然原作の方がよかった。この事件にかかわった何人もの男たちが、立場は違えども梶を見守っていくという男たちのドラマだ。とても重いテーマがいくつも関わっているし、それについては簡単に口にできない。ただ単に私が何も考えてないというのもある。ただし、きっといつか人生のある段階で自分も経験していくはずのことだ。にもかかわらず、それから目をそらしているのが現実だ。実際その立場に立ったとき、自分は一体何が出来るんだろう。


映画でもそうだったけど、ラストの展開がどうしても尻すぼみに感じられた。これだけが惜しい。