水の時計/初野 晴/★★★☆☆

これもAmazonさんのオススメから。脳死と臓器移植をテーマにしたファンタジー、なのかな? 主人公の昴(男)は17歳なのに、表現がそれらしくなくて非常にちぐはぐ。せっかく設定は面白いのに、もったいないなあ。

臓器移植をしなければ生きていけない人たちが世の中にたくさん存在しているというのは情報として知っているけれど、当事者でない限り感じられないことがある。私の身近には心当たりがない。だから乱暴な言い方をすれば、当事者でない私は、臓器移植を今日も世界のどこかで起きている戦争や飢饉や事件と同じ程度に考えているということだ。
その患者のある一人に焦点を当てることによって、群であったものが個として具体化してくるし、そこで初めて知ることや見えてくるものがある。 そこで知ることができたという点ではよかったと言えるが、残念なことに小説としては私は面白いと思えなかった。主人公が30代の男性医師で、キーパーソンである少女の設定を変えればもっと面白く読めたのかもしれない。