グッドラックららばい/平 安寿子/★★☆☆☆

ある時母親が家出してしまった家族の話。中学生の立子は烈火のごとく怒り、姉の積子は男に夢中でそれどころではなく飄々としている。父親は「人様のお役に立っているのだから」と母親を責めることなく淡々と日常生活を送っていく。そしてなんだかんだやっているうちに結局10年以上の年月が流れる。

「家族」というのはこうあるべきだ、みたいなお行儀のいい道徳をくつがえす物語だった。最初は家出した母親にも何か事情があるはずで、それが明かされるまでは母親を責めるべきではないな、結局は家族なんだから…みたいなことを思っていたのだけど、そういう問題じゃなかった。なんというか、とても不快。結局人は皆それぞれ一人の人間であって、血の繋がりがどうとか家族の絆がどうとか、そういうのと関係なく感じたり考えたり動いたりするっていうことなんだけど、親はなくとも子は育つってことなんだけど、いや確かにそうなんだけど。夫婦が見えない絆で繋がっているのも素晴らしいけど。けど。
自分自身がこの物語に「あるべき家族の姿」を求めていたからこんなにも不快なんだろうか。それとも同属嫌悪みたいなものだろうか。自分にも似たようなところがある。腹ん中じゃ何考えてるのやら…とか、都合悪いことは黙っとけ、みたいなやりとりを親きょうだいに対してしている。それは悪か? でもそれが家族という形式の集合体を円滑に継続させるための配慮なのかも? だとしたら善か? なぜそんなにしてまで「家族」を継続させようとするのか? やはりそれは「家族はそうあるべき」だから?
登場人物の誰一人にも共感できないけれど、正直、へこんだ。リアルすぎて。一見幸せそうなエンディングを迎えるけれども、私はこんな家族、いやだ。自分が家庭を持って、その家庭がそんな風に成り立っていたら哀しすぎるもの。