崖の館/佐々木 丸美/★★★☆☆

たまたま書店で平積みしてあって、知らない作家だけどとにかく読んでみっか的な軽いノリで購入。3部作の1作目で、面白かったら残り2冊も読んでみるつもりだった。


雪深い海沿いの崖っぷちの洋館に世捨て人のように暮らすおばさんのもとに、冬休みを使って長期滞在する6人のいとこたち。それぞれが2年前に亡くなったいとこの一人、千波の死の謎を解明しようとするうちに次々と事件が起こり…というミステリ。

設定自体はなかなか興味深いのだけれど、読み終えるまでの間ずっと何かが引っかかっていて、最後の最後にやっとそれが判明した。これ、30年前(1977年)の作品なのね。わかっていればそういう頭で読んだものを、前知識ゼロだったので現行の作家の作品だと思い込んだまま、なんだかみんながみんなキザだなあ、けっ、と鼻白んでしまった。どうやら著者が最近亡くなったとかで、新たに発行されたみたいです。

なんというか、洋館にコレクションされている素晴らしい絵画の数々と、それを鑑賞し芸術論を振りかざすあたりとか、ニーチェやらパステルナークやらゲーテやらといった、海外の詩人たちのフレーズをひっきりなしに引用し、哲学について激論を交わすあたりとか、「高尚な会話に酔いしれている」“いかにも”な感じが鼻につく。ただし、私の平々凡々な日常生活とあまりに違う世界なので、かぶれてるわー、けっ、となってしまうのであって、30年前の若者たち、いわば親の世代が若者だった時代、世の中は若者が芸術や哲学や音楽や政治に熱く入れ込む時代だったのだから、作品の時代設定を誤認識していた私が悪い。
とはいえ、たぶん芸術に造詣が深い人たちは時代など関係なく、もっと深い部分で物語を楽しめるんだろうと思うと羨ましく、そして芸術がわからない自分がアホすぎて寂しいです。最終的には涼子にも裏切られたし。あと、観念的な部分が多すぎて萎えましただいぶ。どんだけ私は俗っぽいんだ。

あと、だいぶ早い段階で犯人も動機も方法もわかってしまったので、非常に退屈でした。どんでん返しを期待してたけど、あっけなく終わってしまった。うーん、続きは読まないなー。