ハサミ男/殊能将之/★★★★☆

ハサミ男 (講談社文庫)

オススメリストの中で一番タイトルに惹かれたのでまず読んでみたのがこれ。

ある日、若い女の子が絞殺された上に喉にハサミをつき立てられるという連続殺人事件が起こる。けれどもそれは完璧な模倣犯の仕業であり、本当の『ハサミ男』は偽者が誰なのかをつきとめていく。

なんというか、すべての点において衝撃的。まず本物のハサミ男の視点で物語が進んでいくというのも斬新だったし、やたら死にたがって毎週末自殺未遂を繰り返すところとか、驚かずにはいられない。おいおいもしこれで主人公死んじゃったら謎解きする前に物語終わっちゃうじゃん!っていうバカみたいなツッコミをしていまうという危うさを孕んでいます。けれどもこの自殺未遂のシーンは身近なもので死のうとする民間療法(民間自殺法?)な匂いが漂っていてわりとリアルに想像がつくので、脳内でかなりエグいことになって本気で吐き気がせり上がってきます。そしてこれがところどころに挟まれることで、見事なほどに不気味で陰鬱なイメージが維持され、かつ積み重なっていく。

もともと猟奇的殺人とかプロファイラーとか警察とかは私の好むキーワードなので、とにかくぐいぐい引き込まれていっきに読んだ。殺人犯の考えていることややっていることがとにかく支離滅裂で(ある整合性はあるにしろ)、いろいろ垣間見てる感じがゾクゾクします。まじでこうやって淡々と動いてるんだろうなーっていう奇妙で空恐ろしい感じ。あとメディアの空回りっぷりもすごいリアル。

衝撃のクライマックスはラストのすごい爆弾。

叙述トリックだったんかーーー!!!うわあもう一度その設定で最初から読み返したい!という『シックス・センス』観た直後的衝動にかられたのですが、とりあえず今回は断念しました(『シックス・センス』は立て続けに2回観ました)。ていうかうわー日高だと思ってたのにいつの間に?えーじゃああの脳内描写は誰のものだ?いやわかってるんだけど、えー?!葬儀だ!葬儀の場面をもう一度!ってちゃんと自分の脳内で整理して置き換えられてないので、余裕があるときに再読したいです。

あと

バッドエンド

ってところもまたこれ特有の後味の悪さたっぷりです。ある意味ひとつは解決してるから、一旦はすっきり終わったような気持ちになるけども。うっわー。磯川おまえ本当にバカだろーーー!!!っていうね。

ひとつだけ納得がいかなかったのは、模倣犯の殺人の動機ですかね。

愛憎のもつれじゃなんかありきたりっぽくて。まあ殺人のための殺人以外の動機なんてそんなものかもしれないのだけれども。できることなら有能なプロファイラーはやっぱり紙一重で、自分もいつでもあっち側へひっぱられる沙粧妙子的な危険な要素は持っているものであって、やっぱり行っちゃったか、っていう感じが私の好みだっていうだけですけど。

これ映画化されて来月公開らしいのですが(公式サイト)、私は絶対にこの作品の映像化は不可能だと思うので、ものすごく興味があります。アリなのかナシなのか、この目で確かめたい。あと主要キャストの豊川悦司麻生久美子阿部寛でどう作るのかも興味津々。
ちなみに私の想像する日高はこんな感じです(田口正浩)。