スーパーサイズ・ミー/★★★★☆

予告編を観たときにビビビときて、絶対これは外してはいけない映画だと思っていたのです。なぜか。映画というかドキュメントだけど。
大学入学とほぼ同時に始めたバイトがマクドナルドだったということもあってか、毎シーズン欠かさないほどに月見バーガーが好きだからか、マックネタには割と食いつく方なので、自分が肥満になったのは全部マクドナルドのせいだと言い張る肥満姉妹がマクドナルドを訴えたというニュースも「アメリカって…」と思いつつ興味津々だった。そういえばマックの社員と付き合っていた時代もあったなー…(遠い目)。

…えーと気を取り直して映画の感想。

マクドナルドのメニューを3食×30日間食べ続けたら、人間の身体はどうなるのか、監督自らの身をもって行う人体実験ドキュメント。3人の医師の精密検査と栄養士のカウンセリングを定期的に受けながら、あたかも苦行のような実験は進んでいく。
被験者のモーガンはおヒゲの素敵なナイスガイで、彼女もとってもキレイな人ですごくお似合いなのに、モーガンがどんどん変わっていくのが切ない。

肉=ヘロインという、そもそもジャンル自体全然違うじゃねえかよ!という大胆かつ強引すぎる発想をするあたり、彼女ベジタリアンに特有の狂信的な匂いがするけど。それまでのモーガン彼女の食生活が素敵すぎて驚きです。

スーパーサイズの正確な大きさがわからないので「とにかくすごい大きい」ぐらいにしか想像してなかったんだけど、

フレンチフライはオリジナルサイズ(300kcal、現在のスモール)の数倍のカロリー、ドリンクは1.8Lだそうですよ。1升ですよ。それを1日に3杯も4杯も飲むっていうんですから。でバーガーはデフォルトで2個。
バーガーの大きさも、もしかしたら日本より大きいんじゃないかしら。これを日常的に食べたり飲んだりしてる人々が存在するっていうんだから。そりゃ太るの当たり前ですよ。ビッグマックは一人1個で十分だってば。

この映画観てると、自分も一緒にマックジャンキーになっていくような気がしてきます。モーガンもきっと、「俺いったい何やってんだろ…」って何度も我に返ったと思います。

何も吐くまで食べることないと思う。
個人的には、日本にない『マックグリドル』っていうメニューがちょっと食べてみたくなった。そしてナゲットはちょっと食べる気が失せた。おいしいのに…。あれはちょっとな…。

あと驚愕だったのは、小中高の学食のひどさと、それを管理する学校側のずさんさ。なにあれ。

喫煙する人が「タバコやめたほうがいいよ」って叱咤されるのは理解できるし本当に「そうだよね…」って思うけど、肥満の人に「食べるのやめたほうがいいよ」って言える人は少ない。私の知り合いで20代で若年性糖尿病にかかった人がいるけど、私は彼が発病して初めて
「夜中にビールとラーメンとギョーザのコンボはいい加減やめた方がいいと思う。あんた死ぬよ」
って言えるようになった。でも彼はまだ自分がいかに致命的な病気を抱えているか、ということをあまり自覚してなくて、少し血糖値が下がるとすぐにそのコンボを繰り出してしまう。欲求が理性を上まってしまう心理はわかるし、結局行き着くところは自分の意思なので、どうしようもない。人は追い詰められて初めて事の重大さに気付く生き物だ。だから死を目の前にするまで実感が持てない。

たとえば胃の大きさを1/3に小さくするバイパス手術みたいな大掛かりなことをしないと、
本気でダイエットはできないのだ。


結局映画の影響があったのかなかったのか知らないけど、アメリカマクドナルドスーパーサイズという規格を廃止して、サラダなどの一見ヘルシーなメニューを取り入れるようになった。日本でもサラダや野菜ジュースがメニューに加えられた。まぁそこにも高カロリードレッシング&トッピングという落とし穴はあるのだけれども。
棄却されたとはいえ、肥満姉妹がマクドナルドを訴えた効果は少なからずあったのかもしれない。残る問題はメディアの影響力だ。あくまでも大手の商業は消費者の健康ではなく株主を第一に考えているので、どんなに世間にヘルシー志向が普及されてもマクドナルドや他のファーストフードは莫大な宣伝費を投じてハンバーガーを売り続けるだろう。そして肥満人口とそれを起因とした病気は増え続けるだろう。


まぁこんな馬鹿げた壮大な企画をやるのも実にアメリカ的という気もします。アメリカのバカっぷりと、その背景に隠された恐怖が最大限に発揮されたドキュメントですね。面白かった。