富士山/田口ランディ/★★★☆☆

富士山ISBN:4163227407
富士山と樹海にまつわる短編集。ランディ節はそんなに炸裂してないので、まぁライトに読めるといえば読める。でもテーマはけっこう重い。私は嫌いじゃないけど。

そういえば富士山は日本人にとっていつも気にされるポジションで、さすがにその存在はすごく大きい。
富士山から遠く離れていても『富士見台』とか『富士見町』とか、昔はそこから富士山が見えたんだよという名残の地名はたくさんあるし、銭湯の代表的な壁のデザインといえば富士山だし、生きているうちに一度は富士山の頂上まで登ってみっかな的な目標を持っている人もたくさんいて、登山道は渋滞するほどにぎわっているという噂も聞く。都内のマンションから「ベランダから東京タワーが見える」と似たような感じで「晴れている日は富士山が見えるんですよ!」という自慢めいた会話が交わされることがある。そして知らず知らずのうちに自分も「へぇ!富士山が見えるなんていいなぁ」なんて思っていたりした。そういえば。
東京にいるとあまり気にしないけれど、出張で静岡あたりに行くと、気付けば目の前にどデカイMt.FUJIがどーーーーん!!と居座っていて、改めてその大きさを実感する。実際私が富士山に登ったのは過去に一度きりで、しかも星を見るために5合目まで車で行っただけというヘタレな感じだし、その時は一緒に行った彼氏とのドキドキの方が大きくて富士山どころか星すらも覚えているかどうか曖昧なんだけれども。そういえばそのドライブの時に本栖湖だか西湖だかに行く途中、樹海の脇を通った時に街灯がまったくないのでやたら暗くて、しかも霧が出ちゃったりして、ここが自殺の名所かと想像し始めたらものすごく怖くて「帰る!」を連発していたことだけは覚えてるなぁ。