ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね/岡崎京子/★★★☆☆

ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうねISBN:4582832121
いろんな人から岡崎京子を勧められるのに、今まで一度も読んだことがない。だから、彼女のマンガを読まずに小説を読んでしまった私はたぶん邪道だと思う。
いまつきあっている恋人に、やっとの思いで別れ話を切り出した。ちゃんと決着はつけられなかったけど、思っていることはきちんと伝えられたと思う。その直後に読みはじめたものだから、最初の別れ話ネタにちょっと泣いてしまった。どんなにどうしようもない男だろうと、やっぱり男と別れる時はなんだかイヤな気持ちだ。
岡崎京子の世界観はとっても独特で、これはやっぱりマンガを読まなくてはな、と本気で思った。
巷で伝説と言われている作品(ジャンルを問わず、アニメでも映画でもマンガでも小説でも音楽でも)はやっぱり、リリースされたその瞬間に知っていてこそリアルな伝説になりうるし、時代の流れとともにその伝説っぷりを実感あるいは共有できるものだと思う。後になってから知ることも悪いことではないけれど、その時代のその時の自分がそれらを知っていなかったことは、やっぱりどこか寂しい。
岡崎の作品を今ごろ知って、すげぇって思って読みふけって、世界にひたりまくっても、今の私は彼女が事故に遭ったニュースに驚愕したり、彼女のその後についてどうこうコメントすることはできない。それらはもうずいぶん過去のことで、当時の読者たちがビビッドにひととおり経験したことであって、私はそれらを情報としては知っていても、現在の彼女の状態が私にとっての岡崎京子だからだ。