暗いところで待ち合わせ/乙一/★★★★☆

暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫) 詳細を見る


乙一は『GOTH』と『ZOO』しか読んだことがなかったのですが、『GOTH』はすごく好きなのに『ZOO』がとても苦手で、うーん、この人の作品はどっちがメインなんだろう…次に読んだものが『ZOO』寄りだったらもう読まないかも…って思っていたのです。でもラッキーなことに『暗いところで待ち合わせ』はとても好きなタイプの物語だったので、この作風なら乙一コンプしてもいいなあと思いました。

視力を失った一人暮らしのミチルの家で、ミチルに気付かれないように息をひそめて身を隠すアキヒロ。彼は殺人の容疑で追われている身。

部屋はいくつもあるのに、わざわざ同じ部屋の、しかも足を伸ばしたら触れてしまうかもしれない距離にいる、ってすごい度胸なんですけども、体臭とか息遣いとかわずかな衣擦れとか畳のきしみとかで気付かないはずはないんだけど、やっぱりこの二人のやりとりは緊張感があってハラハラドキドキします。み、見つかっちゃうーーーー!!!って心臓バクンバクンさせて夢中で読んでいたら電車乗り過ごしました。

ミチルとアキヒロの、とても静かなやりとりがすごく好きです。野良猫が人間に対して抱く警戒心と、お互いが探りあいながら、だんだん少しずつほぐれて馴れていく感じみたいなのがとても。


中学の頃、週に一度のクラブの時間があって、私はなぜか「点字クラブ」というのに入っていました。点字を打つための点字版持ってました。そんでクラブの時間は、ひたすらプチプチ点字打ってんの。なんかよくわからない淡々としたクラブでした。一度も盲目の人にそれを読んでもらう機会はなかったのですけれども。っていうかなんでそんなクラブがあったのかが謎だ。
後に堤幸彦のドラマ「愛なんていらねえよ、夏」でタイプライター形式の、ガシュンガシュンって派手な音を立てて点字を打つ機械があることを知って、うわあ欲しい!って突然思ったのですけれども使う機会がありません。大きくなって生活にゆとりが持ててダンナを早く亡くして子供が全員片付いてやることがなくなったら、点字タイプライターを購入していろんな小説の点訳とかガツガツやって自分の偽善者っぷりに酔いしれる老後を送ろうと思います。この本を最初に点訳しよう。その前にまずダンナ候補になる彼氏探しから始めなきゃいけないので当分叶わない夢なんですけれどね。

ちなみにAC(広告機構)のコマーシャルを見ると毎回泣くタイプです。