散る。アウト/盛田隆二/★★★★☆

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先物取引という名目の詐欺で騙されて、ヤミ金からの多重責務が返済できなくなり、妻と子にも愛想をつかされホームレスになった有名大卒のサラリーマン。彼はいつの間にか、偽装結婚の報酬を得るためにモンゴルへ渡り、ロシア人の女性と結婚することになる。そうこうしているうちにバタバタと事件が起こり、何者かに命を狙われながら大陸を逃亡していく。

私はアングラ系の話題にどうしても喰い付いてしまいます。詐欺とかヤミ金とか偽装結婚とか名義貸しとか麻薬の密売とかホームレスとか何の肉なのかわからない肉とか、そういうやつです。TVなどでもそいういう番組は瞬きすら忘れ、一語一句聞き漏らさないように集中して見るほどです。ちょっと頭おかしいのかも。で、その流れで一時期なぜか狂ったように金融系のサイト(http://www.sarakin.gn.to/gyo_index.html)を読んでいたこともあり(単なる興味本位です)(参考にしたことはありません)(DQNがいっぱいいます)、『ミナミの帝王』を無理やり元彼氏に見せられたら意外と面白くて連続でビデオを見続けたりしたことがありまして、とりあえずツカミが良かったのでガツガツと読みました。面白いです。私的には。

偽装結婚がメインなのですが、とにかく裏社会のアレやコレがたくさん出てきます。花村萬月の『ぢん・ぢん・ぢん』も貪るように読みましたけれども、なんていうか、やっちゃいけないことをやっている人を、安全な場所から傍観するのは快楽のひとつでもあると思うのです。みんな、非道徳的だったり倫理的にまずいことだったり不謹慎なことに、実は少なからず興味を持つものなんじゃないだろうか。だから『歌舞伎町アンダーグラウンド』に2万円もの値打ちがつくんじゃないのか。それをやるかやらないか、要は2択なのであって。向こう側には絶対に行ってはいけない。行ったら帰ってくることはできない。そのラインだけは超えてはいけません。お金は好きだけど目が眩んで犯罪に手を染めちゃダメ。ゼッタイ。

木崎はプライドを最後まで捨てなかった。だから私たちの気持ちは安全なところへ着地することができる。最後の砦だけは守ったという安心感だ。結局あれだけのすったもんだをしたところでヤコフの生活が何も変わらないように、現実では向こう側へ行ってしまう人もいるけれど、とどめておけるものはこっち側にとどめておきたい。

元彼氏が人様に胸を張って言えない仕事(ものすごくいい言い方をするとアウトソーシングだそうです)をしていたとき、「中国人と偽装結婚すると相場は80万円」だったり、「歌舞伎町に行けばいろんなものが買える」という生情報を教えてもらいました。現場の人の言葉は凄みがあります。別れてよかったと心から思います。