サル/★★★☆☆

サル
ISBN:B00024Z78O
治験のバイトをしょっちゅうやっていた時期がある。
シャンプーとリンスを2種類わたされて使い心地を日誌につけたり、2種類の生理用品を使い比べてみたり、そういうライトなやつばっかり。楽な上にある程度お金がもらえるってラッキー、という感覚で。それで命の危険にさらされたり、重度の皮膚病になったりすることはないと聞かされていたし、そう信じて疑わなかったからだ。今だって機会があれば全然やると思う。
もっと割のいいバイトについてもネットでいろいろ調べてみたら、医療系の治験についての公式っぽいサイトをみつけた。3日〜1ヶ月ほど入院して、血圧を下げる薬や内臓系の薬を、内服したり投与されたりしてこまめに採血・採尿・血圧測定などの検査をし、効果があるかどうか調べるというやつだ。これは私のやっていたライトな治験に比べればそうとうヘビーで、もちろん報酬も数十万円にのぼる。
これは一度入院すると外出や運動などは禁止され、食事は病院で出されるものだけに制限され、検査以外の時間はひたすら暇をもてあます。そのため、日がな一日マンガを読んだりオセロをやったりビデオを見たりして寝て過ごす。そんな怠惰な一日を過ごせるうえに大金がもらえるのならば、と心動かされそうになったことも多い。
ただし健常者で長期の休みがとれなければならず、風邪薬でさえも最後に服用してから3ヶ月以上経っていないといけないとかで、チャンスを逃して今まできてしまった。
そしてこの映画を見たら、もうそのヘビーな治験をやろうとはとうてい思えなくなった。たとえ、絶対に危険がないと聞かされたとしても、万が一という可能性があるかぎり、この映画のような結末を迎えないとも限らないのだ。手軽に大金が入ることに気を取られ、身体を切り売りするような行為をあまりに軽はずみにすべきではないと痛感した。
ただ、映画としてはショボい。というかこれは映像作品であって、映画ではない。低予算で棒読みの役者使ったり、逆に芝居がクサイ役者を使うとかが、ショボさを全面に押し出している。自主制作映画っぽいダサさをわざと出したデジタルビデオでの素人隠し撮り風は、ドキュメンタリータッチで逆にリアルっぽかったけど。あと、中谷彰宏が出てるあたりムリがあるな。