今夜すべてのバーで/中島らも/★★★★☆

今夜すべてのバーでISBN:4061856278
身体も精神も、すべてをアルコールに蝕まれてしまった人たちの話。もちろん中島らもの実体験に基づいている。
私は、私の生活にアルコールはまったく不必要であることを、実は昔から知っていた。もちろん飲めないわけでもないし、長いこと飲んでいないので弱くなったけど、弱いなりに飲もうと思えば飲むこともできる。
ただ私は、酔うことが嫌いなのだ。これはもうトラウマみたいなもんで、子供のころから、酔っている他人を見ることも、大人になってからは自分が酔うことも、大嫌いだった。酔って自分を失う人たちを軽蔑してさえいた。子供の頃の私のまわりには、そういうどうしようもない酔った大人ばかりだったのだ。
ただ、お酒を飲みたい人たちや、酔いたい人たちがいることもわかるし、そういう人たちを否定することに意味がないこともわかる。ただ、個人的に嫌いなだけなのだ。今後も私は酒をたしなむことなく生きていくだろう。
誰かにそんな面倒くさいことを説明するのもキモイので、ただ私はお酒が飲めないということにしている。

この本の中には、どうしようもなく酒ばかり飲んで死んでいく人や、それでも何とか生きている人や、そういう人たちを見守る医師たちが出てくるけども、みんなそれぞれ少しずつダメで少しずつ熱くて、やっぱりそれが人間だよなぁと思う。
病院というところは、目に見える死がすぐそばにある。患者たちはみんな、糊みたいなフィルターのかかった毎日を送っている。あすこにいると魂が抜けていくように感じてちょっと怖い。すべてがビビッドすぎる日常を離れると、澱のようなものが心にじんわりせまってくる。そしてだんだんいろんなものに鈍磨になる。それはすごく健康的な精神を保つとういう意味では危険なことのように感じるし、私はできるだけ健康でいたいなぁと思うのです。