探偵伯爵と僕/森博嗣/★★★★☆

探偵伯爵と僕ISBN:4062705702
小学生が、夏休みに身近に体験した連続殺人事件を、ひとつの冒険のようにワープロで書き記す。ある日出会った伯爵やチャフラさんと一緒に、あたまをつかいながら謎を解き、ついに犯人と接触する。
少年少女に向けて発行したのだろうけど、よくできていると思う。主人公は、出来事とそれに伴う自分の考えを淡々と述べていく。この「淡々と」は、余計な飾りをつけずにありのままを表現するという意味で、作者の計算通りすんなり入ってくるしわかりやすい。けれどそれが逆に私たち成人の読み手には事件性をリアルに想像させるように思う。
主人公は純真で感受性豊かな、理想の子供像として描かれている。私たちが子供ってこういうものだ、とか、そうあってほしい、と願うような子供だ。そして随所に、人として生きていくうえでの説教めいたメッセージが込められている。私は子供もいないし、成人になってから青少年向きの小説を読もうという意識がなかったので、改めて今どきの子供の心ってどうなってるのかな、と感じた。自分が子供の頃感じていたことは、きっと今の子供にも共通する部分もあるかもしれないが、時代と共に大きく変化しているだろう。事件によって心に傷を負った子供が書いたひとつの物語という設定は、現代を反映しているなぁと思う。身近に読んだ子供がいたら、ぜひ感想を聞いてみたい。